この話は、私、大久保富彦(有限会社大久保製作所代表)が5月後半の休日の夜、何気なく見ていたNHK報道番組「パンデミック激動の世界」で私が最も信頼する同世代の報道人【大越健介キャスター】を久しぶりに拝見したことから始まります。
世界が初めて経験するコロナウィルスによるパンデミックの中、自身の感染リスクと闘いながら訪問介護を続けておられる現場の方々の努力、苦悩、使命感を映し出し、訪問介護の現場に密着取材することで、介護制度の抱える問題点を様々な角度から深く掘り下げ知らせてくれる番組でした。
驚いたことに番組中、自転車を利用し介護の現場に向かわれるヘルパーの方々の後カゴに、弊社のバスケットカバーが使われているではありませんか。私の眼は、その映像に釘付けとなり、思わずスマホでテレビ画面をパシャリ。
続けて雨の日の映像では、弊社の「自転車屋さんのポンチョ」が大活躍しているのです。
現場のヘルパーの方々の頑張りと私共の製品の深いつながりをはじめて知り、感動と衝撃を受けました。それまで、私共の製品は、単に通勤・通学・お買い物で利用されているものとの認識しかなく、介護の現場で利用されているとは想像すらしておりませんでした。自転車用品を作り続けている「モノ作り」の会社の社長として恥ずかしい限りです。
このコロナ禍においての介護現場の実情を知ったことにより、何か介護現場のお役に立てないか、少しでもストレスを減らすことに協力出来ないかとの思いを抑えきれず、NHKの大越健介キャスター宛に、手紙を書かせていただきました。すると大越キャスターから間髪入れず返信メールをいただいたのです。まさか、まさか、あの大越キャスターから直接返信を頂けるとは思ってもいませんでしたから、申し訳ないとの思いと、すぐの返信で私の想いが届いたことが嬉しく、このご縁をいただけたことを感謝いたしました(お忙しいところありがとうございました)。
そして、番組担当ディレクターと介護事業所の「東京ケア」様にご連絡いただき私の思いを伝えてくださり、現場の皆様と弊社を繋いでくださいました。
早速、翌日には弊社開発チームで【介護現場で役に立つ】をテーマに企画会議を開き、「自転車用前バスケットカバーと自転車用ポンチョ」を一袋に入れ、応援メッセージを添える「訪問ケア用セット」(非売品)を企画しました。
その翌日、全社員を前に朝礼の場で社長として感動した思いと今までの経緯を説明し、社内掲示板にNHKの報道番組を掲示していることを報告しました。
社員は、自分たちの製品がセーフティーネットの現場で大変役に立っていることを知り、自社の社会的役割を誇りに思い、寄付させていただくことに賛同してくれました。
社長としての幸せを実感させてもらった瞬間でした。
6月初めにはNHK番組ディレクターと一緒に報道現場でもあった「東京ケア」様に訪問をさせていただき、約二時間ほどでしたが、直に介護の状況といかに自転車が役に立っているかなど貴重なお話を聞く機会を頂きました。そしてその場で「訪問ケア用セット」300セットをお贈りする約束をさせていただきました。
帰社して一週間。「訪問ケア用セット」を完成しようと弊社工場スタッフが部品調達から奮闘してくれました。本業の日程に影響が出ないよう、現場スタッフが人員をやり繰りして何とか一週間で「訪問ケア用セット」が完成しました。(大久保製作所のみんな、ありがとう)
そして中旬には無事「東京ケア」様に約束の300セットの「訪問ケア用セット」を納品完了いたしました。この梅雨の時期に間に合いお役に立てそうです。
現在、私は家業を継いで3代目の代表です。社訓の一番目に「社会奉仕」を挙げています。私たち大久保製作所「ヤママルト」は、社員の幸福を追求し社会に役立つ製品開発に努め、社会貢献できる優良企業を目指しています。これからも製品を通して、みなさまの困りごとを解決できる魅力的な会社になるよう開発に努めてまいります。
この度、東京ケアの皆様より、過分なお礼のお言葉をいただいた上に、ポンチョの使用感の感想までいただきました。その中にまた新たな開発の芽を発見しています。私共もいただいたご縁に感謝する日々です。今後もセーフティーネットの大切な役割をよろしくお願いいたします。
最後になりましたが、このような社会貢献の場を繋いでくださったキャスター大越健介様、NHKディレクター様、私どもの思いを受け止めてくださった東京ケアの皆様、部品を短期間で納入くださった部品メーカー様にこの場をお借りして感謝申し上げます。皆様のご健康とご活躍をお祈りいたします。
ヤママルト
有限会社大久保製作所
代表取締役大久保富彦